The 巣 in はてな

2016年にADHD診断の出た主婦のブログの、はてな版です

不注意優勢型ADHD(ADD)と仕事「製造販売」

不注意優勢型ADHD(ADD)と気づく前からちょっと生きづらさを感じていた学生時代、就職活動も終えてから、一時的にアルバイトをした時期がありました。大規模なターミナル駅の駅ナカ店舗での製造販売業です。

製造販売(アルバイト)

ある程度の人口を抱えた地域のターミナル駅は、毎度の停車のたびにどっと人があふれます。その人たちに販売するため、作って売って、要らないのは捨てて、片付けて、売り上げ金を納入・報告する、というのが、駅ナカ店舗の製造販売職です。

この仕事のポジティヴな側面

  • 資本主義の世の中の基本的な仕組みが体感できる
  • 人前で話すことの苦手さをスキルで解消できる
  • 生計の立て方はいろいろあると知ることができる
  • 採用のされ方にもいろいろあると希望が持てる

すごく抽象的なところからつかんでみました。学生時代は図書館でアルバイトをしていた身、実業とは離れたところで勉学していたので社会のことをほとんど知らなかったので、「作って売る」ということを身近で見ることは単純に面白かったです。

このバイトでは、駅ナカという人の多い状況下で、会社帰りにお土産品を買ってくれるようお客さんの呼び込みをしないといけません。具体的には商品写真のついた看板を持って、移動客の邪魔にならないようさりげなく気を使いながら、よく通る発声で声をあげます。

正直、2人以上を相手に会話するのは(聴覚失認っていうんですかね、聞き間違いとか聞こえないとかのため)苦手だったし、現在でも得意ってわけじゃありません。でも、やらなければならなかったので先輩アルバイターの見よう見まねでやるのを続けていたところ、脳内でルーティーン化されたのか、特別な感情を伴わずに業務としてこなすことができるようになりました。

これは個人的には快挙でしたね。「ダメな私でも苦手を克服できるんだ!」と自信につながりました。何しろ、常に「あんたはダメだ」というメッセージどころかその通りの言葉を、幼少期から毎日実の母親(いわゆる毒親)の口から出るのを聞いて育ってきていて、自己肯定感マイナスでしたからね……。

ま、母は置いといて。

さらに大きかったのは、いろいろな生き方を肯定して生きてる人たちを知ったことでしょうか。大卒or院修了で省庁や自治体、企業、専門職へ就職する人たちしか周囲にいなかった、というか、転勤族の子供だったため友人づきあいがほぼなく、進学先の同級生人しかライフスタイルの参考にできる人たちがいなかったので、「望ましい生き方=大卒で安定就職」っていう規範意識が強くて、視野がかなり狭かったんです。

が、バイト先にはいろんな人がいました。高卒でフリーターしながら親と同居して将来はどうなるかわからない、とか、複数のバイトを朝から晩まで掛け持ちしながら週の空いている日を舞台女優になるための活動に充てている、とか。対して、私は院修了直後に既婚者となった状態でのアルバイトで。正直、「なんで就職先も決まってるのに、わざわざ専業主婦生活しないでバイトしてるんですか(怒)?」とか直截的に言われることもありました。(奨学金返さないといけなかったんです!)

「生活の不安があっても夢をあきらめない」というのが素敵な生き方って意識はあったんですが、もっと「どうしてもこの生活をするしかない」というケースでも、鬱になるでもなく淡々と毎日バイトに来ているっていう、そのメンタルタフネス、継続力、日常生活力とでも言うんですかね、そういうのが私にはなかったので、ちょっと羨ましかったです。現在なら、たぶんもっとずっと羨ましいと思うでしょうね。どんな状況下でも淡々と生活してないと、新しい一歩も何もあったもんじゃないですからね……。

そして、こうして淡々と働いていると、やはりその業務での技術力は向上してくるわけですよ。気がつくと、バイトリーダーになって、さらに店長になって、アルバイト・パートから正社員になれたりもする。そういう人が当時の店長さんで、木曽さんという男性社員さんでしたが、今でも時々あのテキパキとした働きぶりと観察力を思い出します。

この製造販売バイトには、製造エリア、注文エリア、会計エリアがありました。店長はもちろんこれらのすべてを経験してきていて、個人の熟練度も高かったです。業務の基本やベストプラクティスが思い描けていたせいでしょう、時々店舗の外に出ては業務の進捗を観察し、「回ってない」エリアを見つけるとさっとヘルプに入って手際良く作業します。良い作業を見ると、こちらまで「あっ、集中してやらないと置いていかれる」という気分になってつられて捗って、エリア全体の業務が再び「回る」ようになるんです。

業務で失敗したアルバイターがいたら、個室に呼んで、「どういうことがあったの?」と冷静に、受容的に状況を確認したりもしてました。ほんと、あの人はすごかった。エリアマネージャーもしっかりしてる人っぽかったですが、やはりすぐ傍で見た、この木曽店長の仕事ぶりからはプレイングマネージャーの何たるかをよく学んだものです。この人と同等か、この人を超えるプレイングマネージャーは、その後、正社員として就職して以降、転職もしましたが一人も見ていません。

「アルバイトから入っても、きちんと技術を積んで頑張れば、能力を伸ばして正社員として安定して働ける」ということ。「日々のきちんとした生活の積み重ねなんて、この能力じゃ絶対に無理だ」と思っていた(自分のADDに気づいていなかった)私には、非常に前向きで現実的な希望になりました。

この仕事のネガティヴな側面

  • 一般的な同僚アルバイターとコミュニケーションが取りづらい
  • 文書でできたマニュアルがない(口頭の指示が基本)
  • 単純作業中に常に何か考えてしまって集中できず、作業効率が落ちる

とても意識の変化に役立った製造販売アルバイトでしたが、同僚との関係っていう、転職希望理由の実質的なトップに躍り出がちなトピックにおいては、なんかもう最悪でした。

まず、これは私の個人的な要素が関係しているでしょうけれど、共通の話題が全然見つかりませんでした。視聴するテレビ・ラジオ番組、映画、読む本・漫画、聞く音楽のジャンルとかがかすりもせず。じゃあ、ちょっと試してみようかと漫画の回し読みをする話をするというのに混ぜてもらおうと試みると「合わないからやめたほうがいい」とあからさまに拒否されたり。

といって、悪感情があったわけではないようで、例えば就職後に同じメンバーで運営する店舗に買い物に行ったらちょっとおまけしてくれたりもして、ほのかな仲間意識は持ってくれていたみたいなんですけどね。

うっかりミスが多いから勉強をみっちりしないといけない、みたいな環境下で育って趣味もその延長みたいな教養路線に縛られてきていると、面白いと思うための基礎力がやはりその方面に限られてしまって、共感しようにもできないってことあると思うんです。もともと雑談苦手だから話題探す努力はしたんですけど、向こうからもこちらに興味を持ってもらえないし、長く働く気が失せてしまいました。お金のためにやってましたね。

まあ、職場で個人的に仲良くやれたほうが気持ちがいいと思うのがそもそもの間違いなのかもしれません。あと、たぶん、かつての一般職と総合職みたいな、業務で携わるスケールの好みっていうのはやはりあって、そこの違いは学歴の志向とちょっとかぶっているんじゃないかと。目標が違ったら仲良くすべき相手も選んだほうがいいんでしょうね。むしろ上から気にいにいられる業務スキルを手に入れたほうが収入UPが望めそう(長く働くなら)。とはいえ、私が本当に仲良くすべきだったのは、たぶん、ADDのアルバイター仲間でしたね。

だって、アルバイター向けのマニュアルとかないんですよ。上司に有無を訊いたら「作っても誰も読んでくれないし」だそうで。初日に言ったら、OJTで、その日のみ先輩社員の様子見て憶えるんです。メモ? メモする習慣なんてないです。メモさせてもらえる暇がない。(あと、メモしていると変な目で見られる。)それ以後はやはり周囲をチラ見しながら間違ってないかを確認して、少しずつ慣れていく感じでした。実際、単純作業なので、そのぐらいで足ります。基本的には。

困ったのは、売上金を集めて駅内にある特別な納金室の金銭カウントマシンに納入したり、売上金額を店舗内端末から本部に報告したりするのについても、マニュアルがないんですよ。端末の画面のどこに何を入力するとかも、画面のハードコピーとかなしに、「ここにこの数字を入れたら、このボタン押して。次に、矢印押してここに来たらこの数字を入れて……」とか口頭指示でした。

ADDのみなさんは、一つのことに集中せず、いろいろ見ることにより全体が見渡せたりしませんか? たぶん、さっき上に挙げた店長のような業務って得意だと思うんですよ、俯瞰して見て、獲物がいたらそこを鷹の目のようにズームアップして分析し、ピンポイントで対処する、みたいなこと。ついやっちゃいません? そういう業務改善がパーッと脳内を閃いては消え閃いては消えていくのを追うこと。

「そもそも、この業務は何のためにやってるんだろう?」「だいたい何時間でどのくらい製造しないといけないんだろう?」「効率良く製造するためのコツって何だろう、共有されてるのかな?」とか、ついつい私は単純作業中に考えてしまうんですが、周囲はそんなことを考えることなく淡々と作業するんですよね。で、あえて質問してみても、「こう決まってるから」「慣れたらできるようになる」っていう、何代目かの頑固職人みたいな返事しか返ってこない。

しかたなく脳内でBGM流して集中しようとしましたが、これはこれで途中から同僚に「そういえば、xxって知ってます?」とか雑談を振られたりして、上手くいきませんでした。「上手い人のスキル発見して盗むゲームに出てる」って意識を切り替えたら、ちょっと楽しくはなりましたが、それでも、長く働きたいとは思えませんでした。いっそ私語禁止でマシンのように働かせてくれ、と何度思ったことか。

物を考えるとそれだけ数をこなすのに妨げになってしまうんですが、これが業務時間外の雑談でのかみ合わなさと相まって、「作業効率悪いから『こいつダメだ』みたいに思われてないかな?」と被害意識を加速させ、それがADDの敵、「(嫌だけど、これから抜け出すには)頑張るしかないから頑張ろう」という非積極的な努力に結びつくと、ほんとドツボにハマります。

まとめ

こんな感じで、製造販売職、悪くはなかったんです。同僚とのテレビとか漫画とかの雑談がそこそここなせて、コツコツ出勤して、単純作業中に物を考えないでいる工夫ができるかマルチタスクできるなら、たぶん長続きできる良い職種だと思うんです。

でも、ADDや二次障害のせいなのかそうじゃないのか……いろいろと発想がわいてしまって脳内が忙しくなってしまうタイプには、このような働き方ってちょっと難しいんじゃないかと思いました。特にそういうことはなかったんでここには書かなかったけど、注文等の聞き間違いとかあったら、たぶんなおのことやりづらいかもしれません。

これに比べたら、もうちょっと自分のペースでできる販売っていうか営業職のほうが良いので、私としてはやはり内勤営業職を製造販売職よりはベターな選択肢として提案したいです。